19世紀の終わり頃、フランス領インドシナの中心として都市化が進んだ南部の大都市は、外国人や商人、政府関係者らが集う貿易都市として発展を遂げた。東南アジア屈指の人口規模を持つこの都市は、高温多湿な熱帯モンスーン気候に位置しており、乾季と雨季のはっきりした特徴がある。街にはコロニアル様式の建物が残り、広い並木通りやカフェオレの文化が根付いている反面、急速に新しいビル群や現代的なショッピングモールも増加し、新旧が混在する景観が広がる。ベトナム第2の経済都市として活気あふれるこの地では、自動車やバイク、バスが絶え間なく往来し、市内交通の混雑も重大な社会課題となっている。老舗の市場や伝統的な食品店、コムタムやフォーの屋台、蓮茶といった庶民の味が生活に溶け込み、伝統芸能や美術館では地元の歴史や資料が紹介されている。
本格的な発展とともに生活水準が向上したことで、医療への関心も高まってきた。都市の医療体制は、西洋医学と東洋医学の両方が並存し、多様な健康観と供給体制をもつのが特長である。一般市民向けの公立病院は混雑が常態化しており、低料金で診察を受けることが可能な点が幅広い層の支持を集めている。ベトナム全土から患者が集まり、診察を待つ列が入口付近まで続き、家庭的な雰囲気のなか専門医が問診、診療、検査と活動している。小児科や内科、外科、産婦人科など診療科ごとに分かれているが、医師不足などから一人の医師が複数の分野を担当することも珍しくない。
民間の医療機関は、市内中心部や居住区の近くに散見される。個人経営のクリニックでは症状の軽い患者や健康診断、予防接種などに対応しており、予約制のシステムを活用しており比較的待ち時間が短い。外国人滞在者や駐在員向けには、外国語に対応できる診療所や総合病院も整備が進められている。日本語などそれぞれ得意とする言語や医療分野を持ち、スタッフは代表的な医療機器や衛生基準も意識して日々業務にあたっている。上質な内装や落ち着いた雰囲気の待合室、取り揃えられた医療検査機器も大きな安心材料である。
都市にある病院の構内には薬局が併設されていることが多く、院内処方に便利な環境が整備されている。診察をすませてから薬を即時に受け取れるため、多忙な市民や子育て世代には特に重宝されている。調剤された薬以外にも、市販薬や健康サプリメント、美容関連商品なども並ぶ棚が多く、病気の治療だけでなく予防的ケアを意識する市民のニーズに応じている。設備の面では、CTやMRI、超音波診断装置などが導入されている大規模病院もみられるが、一部地域においては機器不足や老朽化の課題も残る。病院によっては医療従事者向けの研修制度も拡充されており、国際医療協力や他国との連携も強化されてきている。
衛生面の指導や感染症対策も徹底されており、清掃スタッフや警備員の手によって安全な環境が維持されている。一方で、伝染病や新しいウイルスによる感染症が問題となる事例にも対応すべく、地元行政や保健当局が中心となって地域活動を推進している。ワクチン普及や啓発セミナーが定期的に行われ、市民への知識普及や免疫獲得が強調されている。地元メディアによる情報発信も頻繁に行われ、健康保険や医療制度の利用方法についての説明が市役所やコミュニティセンターで提供される。またこれは都市部に限った問題ではなく、都市から遠く離れた地方からの患者流入により、一部病院では受け入れ体制の逼迫や満床状態が続いている。
地域格差解消に向けて、衛星クリニックや移動診療車を導入し、高度な治療を必要とする患者が都市部の病院に円滑にアクセスできるよう工夫されている。全体として都市の病院と医療環境は、集中的に発展を続けているといえる。医療従事者の意識向上に加え、利用者の健康リテラシーも向上し、多様な選択肢から適切な医療資源へアクセスできる仕組みが強化されている。こうした現代的な健康観と伝統的な価値観が共存する環境は、市民の安心な暮らしを下支えしている。19世紀末にフランス領インドシナの拠点として発展したベトナム南部の大都市は、貿易都市として多様な人々が集まり、コロニアル様式の建造物やカフェ文化、並木道が残る一方で、新しいビル群やショッピングモールが急増し、伝統と現代が調和した独特の景観を持っている。
この都市は経済的にもベトナム第2の規模を誇り、活気に満ちた市場や屋台、伝統芸能に生活文化が色濃く息づく。発展に伴い市民の生活水準は向上し、医療への関心も高まっている点が特徴的だ。医療体制に関しては、西洋医学と東洋医学が併存し、公立病院は低料金で幅広い層を受け入れ続けているが、混雑や医師不足が課題となっている。個人クリニックや民間の医療機関では、予防接種や健康診断など軽症に対応し、外国人向けの多言語医療施設も拡充。市内病院には薬局が併設され、診察から薬の受け渡しまでが効率的に行われている。
医療設備も徐々に整備されつつあるが、地域によっては機器の老朽化や不足も見受けられる。また、感染症対策やワクチン普及など公衆衛生活動も強化され、市民の健康リテラシー向上と合わせて、安心して医療にアクセスできる環境の整備が進められている。しかし、地方からの患者流入による都市部病院の逼迫や地域格差も依然として課題であり、衛星クリニックや移動診療車の導入によってアクセスの向上が図られている。伝統と現代が織り交ざる医療環境は、急速な都市化の中で市民の健康を守り、安心した暮らしを支えている。